『長彦と丸彦』6回目です
みんなが喜んでるうちに、ひとり、堅田(かただ)の顔長の長彦は、だんだん考えこんできました。しだいにお金に困ってきたのです。
大津の町で借りあつめたお金は、はじめ相談した人たちが出しあったお金よりも多かったほどですが、湖水(こすい)に沈んだいくつもの船の持ち主に、その船の代をはらったり、それから三度も、米や芋の買い入れのために、たいへんなお金を使ったので、すぐに足りなくなりました。おもだった人たちのうちには、きのどくがって、お金をいくらかでも出そうという者もありましたが、多くは、はじめの失敗にこりて、だまっていました。
そこで、顔長の長彦は、三日三晩、考えつづけて、弟にいいました。
「たくさんの貧しい人たちのためになることだから、私は決心をした。大津の町のお金持で、この屋敷(やしき)を売ってくれるなら、お金はいくらでも出そうという人がある。それも、こちらでお金ができたら、いつでもまた買いもどしてよいという約束だ。だから、一時、この屋敷をお金にかえたいと思うが、どうだろうか」
顔丸の丸彦は、野原や山をとびまわることがすきで、家や屋敷(やしき)などはなんとも思っていませんでしたから、すぐに答えました。
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